遊びを学ぶ!プレーパークせたがや

実録風 プレーワーカーの一日。-子どもの遊びの真ん前で-

ただ遊ぶだけじゃない。 その仕事は、高い専門性で出来ている。

プレーワーカーの仕事は単純ではありません。 子どもたちからは「ずっと遊んでられるなんて最高だな!」と憧れられている彼らですが、その日常の業務は多岐にわたり、また目に見える行動の裏には、高度な専門性に裏打ちされたさまざまな配慮や思惑が隠れています。 プレーワーカーがどのように、またどんな思いで働いているか?その一日を、実録風に再現してみました。

あさ

○月○日  9:30出勤〜安全点検〜
プレーパークの開園は10時から。30分で同僚のプレーワーカーと一緒に、現場の安全点検や遊具の準備を行います。

プレーワーカーは、羽根木は3人。世田谷・駒沢・烏山は2人体制です。はじめに軽く今日のお互いの動き方を確認した後、手分けして準備に臨みます。安全点検で気をつけるのは、見えない危険を見つけること。

プレーパークでは、一般的に「危ない」と言われる遊びがたくさんあります。例えば、高い場所からの飛び降りとか。でも、それは何が危ないか見えますよね。子どもたちは、自分がこの高さを飛べるか判断して挑戦する。だからその危なさは、危険じゃなく冒険です。でも高い場所の板が腐っていて、いざ踏み切るときにバランスを崩してしまったら、それはただの危険です。つまり見える冒険要素を残しつつ、見えない危険をできるだけ取り除いていくのが大切なんです。

10:00開園〜乳幼児の時間〜
開園してしばらくすると、乳幼児連れの親子が次々とやってきて、たちまち賑やかに。

午前中は、やっぱり乳幼児親子が多いですね。
プレーパークは自主保育(※)の団体の活動拠点となっている場合が多いですし、保育園が遊びに来ることも多々あります。もちろん、単独で遊びに来る親子連れも多いです。
私たちは、子どもと遊ぶことももちろんありますが、特に乳幼児の場合、保護者の方とお話しすることも多いです。

いま、いわゆる「孤育て」が社会問題になっています。ここに来るお母さんの中でも、「そう言えば、この1カ月誰とも話していなかった」なんて方もいて、実は「孤育て」に苦しんでる人はいっぱいいます。
でも、プレーパークに来て、「あ、子育ってこんなんでいーんだって思った」と言う人も多くて。それはきっと先輩ママたちや、ここに来るいろんな子どもに出会うことで、自然に肩の荷を下ろすことができたんだと思うんです。だから、場の力や、ここに来る人たちの力を信じて、なるべく人と人をつなげるようにしています。

ひる

12:00 〜お昼ごはん
お昼ごろになると、乳幼児親子も大半が帰り、静かな雰囲気となる。

平日だとこの時間は、比較的のんびりしています。 土日や夏休みで子どもがいるときは、焚き火でお昼ごはんを一緒に料理することも多いです。「何つくる?」なんて相談して、一緒にスーパー行って、みんなで料理して、みんなで食べる。児童館のサークルが来たときなんかは、豚汁やカレーをおすそ分けしてもらったり。

「同じ釜の飯」って言うじゃないですか?やっぱり一緒にごはんを食べると、子どもでも大人でも、距離が縮まりますよね。だから、「孤育て」で苦しんでるお母さんとか、「ちょっと気になるな」なんて子どもとも一緒にごはん食べられたら、もっといろんな話を聞けると思うんですよね。

14:00 〜遊具の打ち合わせ〜
この日は、新しい遊具をつくるために、地域の人たちと遊具ミーティングを開催。

プレーパークでは、遊具は全てプレーワーカーと、地域住民のみなさんでつくっています。
自分たちの手でつくる利点は、「子どもたちの遊び方や希望に合わせて自由につくれる」ということがあります。修理や改造も自分たちでできるし、地域の人たちとの関係づくりにもなります。

プレーパークが他の公園と違って、苦情が多くてもなんとかやっていけるのは、地域の人たちが運営を担い、応援してくれるからです。
それまで、子どもを連れて来てるだけのお父さんも一緒に作業すると、「こんなに考えて遊具をつくってるんだ!」、「一見危ない遊びも大切なんだね」など、いろいろ気づいて、子どもの遊びを支える仲間になってくれる。仲間づくりは、プレーワーカーの大切な仕事の一つです。

16:00 〜小学生襲来〜
3時半を過ぎる頃から、ポツポツと子どもたちがやって来て、気がつけば園内は子どもたちでいっぱいに。

曜日にもよるけど、3時から4時ぐらいが一番活気がありますね。学校が終わって小学生たちがやって来る時間です。
多いのは、やっぱり低学年。残念ながら低学年の頃、毎日来てた子が、高学年になったら急に来なくなるってことは本当によくある。プレーパークに飽きて…なら良いけど、直接聞いてみたら、やっぱり塾なんですよ。

でも高学年に限らず、今の子どもたちは本当に忙しい。お稽古とかで予定びっしりだから「遊ぼう」 って誘われても「じゃあ、3時半から30分だけ」みたいな会話が実際にあるんです。30分って、遊びが成立する時間じゃないですよね?そんな細切れの時間でしか遊べないってとても心配だし、この状況は本当になんとか変えたいですね。

16:30 〜トラブル発生!〜
木から落ちた!との声で、プレーワーカーが様子を見に行く。一人は手当て、一人は子どもたちへの聞き取り。幸いこのときは大したことがなく、落ち着いた子どもは遊びに戻っていった。

ケガが起こったときが一番緊張します。プレーパークでは、「子どもが本気で遊んだら、ケガは起きる」と考えています。常に限界へ挑戦する子どもたちですから、時には失敗もあるしケガもある。だから私たちは、「どうやってケガが起きないようにするか」ではなく、「ケガをしたときどうするか」の研修を受けています。応急手当てはもちろん、近隣の病院の情報を集めて整理しておくこと。同僚と手分けして、ケガが起こった状況をできるだけ詳細に聞き取ることなどを学びます。

とは言え、ケガが起こったらやっぱり心配です。ケガした子がまた現場に顔を出してくれるまで、ずっと不安です。でも、子どもが自分の限界に挑戦できる環境は絶対に必要だし…気持ちは揺れますが、その度に本当に子どもにとって大切なことはなんだろう?と問い直す機会にしています。

ゆう

18:00 〜閉園〜
プレーパークの閉園時間は午後6時…だが、まだ帰らない子どももちらほら。それどころか、制服姿の中高生たちが続々と姿を現しはじめた。

子どもによって、家のルールも違うし、7時8時でも、家に誰も帰ってない家庭もあります。それに中高生は部活があったり学校が遠かったりして、この時間じゃないと来られない子もいる。だから「6時だから帰りな」みたいな声かけは基本的にしません。それに、もしここで時間を過ごせなければ、例えばコンビニ前にたまったり、繁華街に行くかもしれない。そっちの方が心配ですよね。
だから、プレーパークでは時々、「夕食会」と言って、中学生以上の子たちとプレーパークの現場や、近隣の区民会館などで、一緒にごはんをつくって食べる会を開いています。

ゆう

プレーワーカーの就業時間は6時半まで。夕食会があるときは残業代が出ます。特に何もないときの閉園後は、片付けや安全点検をしたり、事務所の中で同僚と振り返りをしつつ日誌を書きます。振り返りというのは、その日起こった印象的な出来事や、覚えておくべきことを同僚とシェアし合う、いわば反省会です。

プレーパークではいろんなことが起こります。ケンカやケガもあれば、子どもの成長を感じられる劇的な瞬間に立ち会うこともあるし、時に若者に悩みを打ち明けられ、一緒に悩むこともあります。それらの一つ一つを同僚と話し合って、問題を整理したり、別の視点から助言をもらったり…。話が盛り上がり過ぎて、帰りが遅くなることもありますが、プレーワーカーとしての成長に欠かせない大切な時間。一日の終わりにしっかり話し合えると、よし、明日も頑張ろうって思えるんですよね。