遊びを学ぶ!プレーパークせたがや

「こども商店街への思い」 第3回 見逃して見守るこど商デビュー

 子どもたちが自分で商品もお店も作り、本物のお金で商売をする「こども商店街」。

 現在高校生の息子は、小学2年生の時に初めてポップコーン屋さんを同級生たちと出店しました。お店の場所決めの日に、「もう柱を建てて来ちゃった!」と自信満々で報告されたので見に行ってみると、土の上に石ころで周りを押さえられた木材が4本、傾きかけながらかろうじて建っている状態でした。「そんな石をよく集められたな」とか、「柱が建つまでに何度もやり直したんだろうな」など、今思うと、まだ2年生の彼らが知恵を振り縛って夢中で建てた不安定な4本の柱の光景がとても愛おしく思えるのですが、当時の私は、「そもそも柱っていうのはね、、、」といいながらシャベルを自ら握って穴を掘り始めてしまいました。「ここは大人商店街?」とプレーワーカーに言われて、はっと気付いた時には、既に息子たちは他の遊びに夢中になっているという有様。私の商店街母デビューは、完全に子どものやる気を取り上げてしまった、ほろ苦い思い出です。

 一方、現在6年生の次男は、1年生のときに消しゴムはんこ屋さんを一人でやってみたい。売りながら、子どもたちにはんこの掘り方を教えてあげたいと言い出しました。長年商店街に憧れてお店作りの様子をじっと観察していた彼は、丈夫な柱とテーブルのあるお店を周りの人に手伝わせながら商店街当日までに作り上げました。お店作りに殆どの情熱を持っていかれたため、肝心の商品は手薄で消しゴムはんこの完成品はわずか。立派なお店に並べられた、さみしいくらいに数少ない消しゴムはんこはすぐに売り切れてしまい、はんこ教室を訪ねてくれたちびっこと一緒にはんこを掘り始めましが、先生もちびっこなので教室運営も直ぐに下火に・・・。すると次男はお店の前を歩いてる人と、「なんて名前?」「とうこ」と簡単なやり取りをし、真四角の消しゴムに「T」の2本線をしゃしゃっと(勝手に)彫り、「できたよ!100円でいいよ!」と差し出しました。差し出されたとうこさんは色々思う事がありながらも、小さな手に載った自分のイニシャルのはんこを面白がってお買い上げしてくれました。私はそのことを購入後のとうこさんからのクレーム(笑)のような報告で知らされたのですが、もしも私の目の前でそのやり取りがあったら、「それ100円?」などと余計なひとことを言っていたでしょう。

 我家の子どもたちの「こども商店街」の愛おしい光景は、全て親である私の見えないところで、危なっかしいところも見逃して見守ってくれる、ワーカーや商店街のお客さんたちによって育まれている気がします。それはありがたいなと思う反面少し寂しいので、今年は私が、我家以外の子どもたちの危なっかしくもかわいくて、キラキラドロドロした風景を共有させてもらいに、「こども商店街」に見守り見逃し参戦しにいきたいです。

(ヤマザキシエ)

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 第3回は、はらっぱだより2018年春号からの再掲です。時代は変わっても変わらない「こど商」であり、子どもたちの自由な魂と親のモヤモヤ。このコラムに登場する子どもたち、上の子はもう大学生、下の子ももう高校生で、2人ともたま~にはらっぱに顔を出してくれます。ポップコーン屋さんの時には、私はまだはらっぱに来ていなかったけれど、このはんこ屋さんは、私もお客さんとして楽しませてもらったな、と懐かしく思います。
 1年生の頃のこのハンコ屋さんに行った時は、もう良いのは売れてしまった後で、私は最後の方のお客さんだったみたいです。小さいいびつな丸い消しゴムのかけらに真ん中に十字の切り込みが入ったハンコ、100円だったかな、「これ何?」と聞いたら、「的(まと)だよ!いいから買って!」と言われました(笑) そんな可愛さと面白さで売り付けていたハンコ屋さんも、小学校中学年になる頃にはハンコも素晴らしい出来栄えで、大人気店になっていました。その頃の彼は、ハンコの原価が高いことに頭を悩まし、もはやかけらに切り込みを入れただけでは売れないハンコ職人のプライドを持ち、成長を感じたものです。自分の子以外の子のありのままの様子や成長をひたすら楽しむ、大人として、こども商店街のお客さんとしての楽しさを教えてもらった出会いでした。(世話人しみず)

投稿日は: 2022年3月18日 12:46 AM