2019年11月7日 6:06 PM

【オススメの本】子どもと悪

(↑タイトルをクリックすると読みやすいレイアウトになります↑)

秋ですね〜、読書の秋。
というわけで、今日はいつもと趣向を変えて、
子育てのヒントになるオススメの本をご紹介したいと思います。

それがコチラ!
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「子どもと悪」
岩波現代文庫から出されている、河合隼雄さんの著書です。

河合隼雄さんは、ご存知の方も多いと思いますが、
日本に臨床心理士という職業を定着させたパイオニアです。

臨床心理士とは、心の病気や人間関係の悩みなどを抱えた人が相談に行く、
「心のお医者さん」みたいなものですが、精神科医とは違って、
対話を通じて、その人自身が病や悩みを克服していくお手伝いをする専門家です。

河合先生は、その豊富な現場体験から、心の病を抱えた人や、
子どもが育つ中で抱える様々な問題についての本を、たくさんお書きになりました。
それらの本は、易しい語り口が特長で、とっても読みやすい。
それでいて内容が深くて、読むたびに新たな気づきをいただけます。

この「子どもと悪」という本も、もちろんそういう一冊です。
でもタイトルがとてもショッキングですよね。
どういう事が書いてあるか、ワタクシなりに一言でまとめると、
「子どもが、悪いことをすることは、実はとても大切なのだ」という、
これまたショッキングなコトバになってしまいます。

もちろん、一冊の本を一言でまとめるなんてことは、著者にも本にも大変失礼ですので、
もう少し詳しく、内容をご紹介したいと思います。
まず、この本の主張がとても分かりやすく著されている、序文の一節をお読みください。

現代日本の親が子どもの教育に熱心なのはいいが、
何とかして「よい子」をつくろうとし、
そのためには「悪の排除」をすればよいと
単純に考える誤りを犯している人が多すぎる。
そのような子育ての犠牲者とでも呼びたい子どもたちに、
われわれ臨床心理士はよく会っている。

つまり「よい子」として育てられすぎた結果、
心の病に苦しんでいる人たちをたくさん診てこられた、ということなのでしょう。
それは、プレーパークの世話人を長年続けた、今のワタクシにとってみれば、
意外でもなんでもない、「よくある話」です。

でも約20年前、子どもが生まれたばかりの頃の自分を思い返してみると、
「危ないもの、怖いもの、悪いことから、子どもを遠ざけねばならない」と、
真剣に考えていたことに、思い至ります。
こうした考えから脱却するきっかけになったのは、はらっぱに出会って、
自分自身の子ども時代を、改めて見つめ直したことからでした。

「よく考えたら、自分も相当デタラメな事やってきたし、
それがでも、育ちの中で大いに役立ったよな」と思い出せたことが、
「悪から子どもを遠ざけなければ」という単純な考え方から
目覚めるきっかけとなったのでした。

と言っても、もちろんこの本の中でも「悪」を全肯定しているわけではありません。
むしろ非常に危険な悪をスルーしてしまう甘い親のことは、
厳に戒めていらっしゃいます。
しかし一方で、悪が子どもの育ちに寄与することもある、とも説かれています。

例えば、この本の第1章は「悪と創造」というタイトルです。
その内容は、例えば大学教授や作家など、創造的な仕事をしてきた方々、
何人もにインタビューをした結果、全員が子ども時代になかなかの
「悪」をしてきたことが明らかになります。
学校に3分の1ぐらいしか行かなかった人、毎夜のように盛り場に繰り出していた人、
万引き衝動が出てどうしようもなかった人…などなど。

これらのインタビューから、子ども時代の悪は、
その後の創造性の発揮に欠かせないものではないか、と
河合先生は語られます。

なぜ、そのようなことになるのでしょう?

そもそも「悪」とは人間がつくりあげた概念です。
例えば、ライオンが他の動物を殺して食べても、それは悪ではありません。
でも、現代社会で人間が他人を殺して食べたら、これは許されざる悪です。

つまり善悪の判断というものは、この社会の秩序を守るために、
つくりだされた物だということがわかります。
それは人間の行動を縛り、抑えつける役割を持っているのです。

だから、あまり過剰に悪を排除してしまうと、
子どもから意欲を奪い、行動力を奪い、個性を奪うことに
つながってしまう、ということではないでしょうか?

この本の中で、河合先生はさまざまな「悪」について、言及されています。
親に隠れて秘密を持つこと、盗むこと、攻撃すること、感情を爆発させること、
それから性について関心を持つこと…。
そして、そのどれもが単純に排除すれば良いというものではないことを、
繰り返し述べられています。

この「単純に排除すれば良いものではない」、ということがキモなのですよね。

子どもがする「悪いこと」の中にも、
一歩間違えば、犯罪に繋がったり、命を奪う危険なものもあります。
だから、それを目にした時に、周りの大人がどういう対応をするかが大切なのだ、
ということが、この本の中で最も河合先生が言いたかったことだと思います。
それを端的に著した一節があります。

大人は子どもに根源悪の恐ろしさを知らせ、それと戦うことを教えねばならない。
時によっては厳しい叱責も必要であろう。
しかし、そのことと子どもとの関係を断つこと、
つまり、悪人としての子どもを排除してしまうこととは、別のことなのである。
自分自身も人間としての限界をもった存在であるという自覚が、
子どもたちとの関係をつなぐものとして役立つのである。
そして、そのような深い関係を背後にもって、悪も両義的な姿を見せてくると思われる。

自省を込めて言いますが、大人はついつい子どもの前では、
自分が上だと思ってしまう。
完璧で、子どもを裁くことができる存在だと思ってしまう。

でも振り返ってみれば、自分だってロクでもない所もあるし、
嘘だってつくし、多少の悪をなしていることもある。
だから、大きな悪に対しては、子どもにしっかりと教え諭すことはもちろん必要だけれど、
私たちもまた、共に成長していく未熟な一人だという立場を忘れないことが、
大切なのかなぁと考えました。

感想はもちろんそれぞれあると思いますが、
子育てに当たって、大切な視点をたくさんくれる名著だと思います。
機会があれば、ぜひ一度読んでみてください。

(世話人:アタル!)